Skip to content Skip to sidebar Skip to footer

佐藤大とnendoが手がけた「川」をモチーフにしたTGV inOuiの新デザイン

想像してみて、高速列車が優雅に流れる川に変身したら、どんな姿になるのでしょうか?日本のデザインの鬼才佐藤大が率いるnendoデザインスタジオが、フランスのAREPデザインチームと手を組み、フランス国鉄の新しいTGV inOui列車をデザインしました。流れる川をデザインの核に据え、大自然の優美なリズムを高速鉄道に吹き込みました。

デザイン界の奇才・佐藤大(Oki Sato)
nendo スタジオ

2002年に設立されたnendo スタジオは、デザインの鬼才とも称される佐藤大が率いるスタジオで、ミニマルかつ詩的なデザインで世界的に知られています。スタジオ名のねんどは日本語で粘土を意味し、柔軟で多様なデザイン理念を象徴しています。佐藤大は日常の観察を驚きに満ちたデザインへと昇華させることを得意としており、今回フランスの高速鉄道に取り入れた「河」のコンセプトは、自然を観察しデザインへと昇華した彼の卓越したクリエイティビティを示す絶好の例です。

そして、スタジオはデザイン図を公開するだけでなく、佐藤大自ら列車に乗り込んで体験しました。

1981年に運行を開始したフランスの高速列車TGV inOuiは、フランス国内の主要都市を結ぶだけでなく、隣接する国々にも延伸しています。2018年に導入された第五世代のTGV列車は、二階建ての車両システムを採用し、時速300kmを超えるスピードを誇ります。省エネルギーと環境保護を重視しながら、乗客収容数の新たな高みに挑戦しています。

川のイメージが巧みに取り入れられている

nendoチームは、鉄道列車が広大な地形を軌道に沿って走る様子に着目しました。そこで、《流れる川》をデザインコンセプトとして採用し、川の穏やかな流れや深さの変化、河床に散らばる滑らかな玉石、さらには水面の浮遊感や気泡のようなテクスチャーまでも細やかなディテールに落とし込みました。これにより、乗客がまるで川に沿って優雅に旅をしているような心地よさを体験できるデザインが誕生しました。

車内の色彩レイヤーについて述べると、シートと同じ高さに水平線で色が分けられています。下部は深い色調を、上部は徐々に明るい色へとグラデーションになっており、水の深浅の変化を表現しています。一等車両ではボルドーレッド、ブリックレッド、マスタードイエローが組み合わさって温かみのある雰囲気を演出します。一方、二等車両ではネイビーブルーとブルーグレーが用いられ、落ち着いた印象を作り出しています。

座席のデザインは、貝殻のように包み込むシルエットを採用し、河床の丸い小石を思わせるなめらかな輪郭を表現しています。また、特別にOctaspring 3Dニット素材を使用し、通気性と快適さを確保。座席は河床に自然に散りばめられた小石のように配置され、快適でリズム感のある空間を作り出します。さらに、宙に浮いているようなバーカウンターのデザインや、床の素材とパターンは、水面のさざ波を反映しており、水の上に浮かんでいるような軽やかな感覚を演出しています。

動きのある空間デザイン

二階建て車両のデザインでは、あらゆる空間のディテールに水の流動を感じさせる意匠が取り入れられています。1階の飲食エリアには、優雅な曲線美を持つバーが採用され、浮遊感のあるデザインで、空間全体がまるで水面に浮かんでいるような印象を与えます。また、棚や収納スペースのデザインも硬直的な直角を避け、柔らかな曲線で仕上げられています。

2階の休憩エリアは静かな河床をイメージした空間に変身。座席やベンチの配置は従来の列車の規則的な並びを打ち破り、河床に自然に散らばる玉石のようにデザインされ、絶妙なリズム感のある空間が生まれています。全体の動線計画もスムーズで自然な流れとなっており、移動中でも旅客は水流のような心地よさと優雅さを体感できます。これにより、デザイナーによる《モバイル建築》の独自の解釈が見事に表現されています。

3種類の異なる光源配置
流れるような光と影の雰囲気を演出

車内デザインにおいて、照明システムが巧みに水の流動美を表現しています。3種類の異なる光源配置によって、層次感のある光と影の空間が創り出されています。座席エリアの上部には、高さのある照明が設置され、暖かみのある十分な読書用の光を提供します。低めに配置された照明はバーカウンターエリアを彩り、水面に光が反射するような温かい雰囲気を演出。壁付け照明は通路に沿って配され、柔らかく均一な光の流れを空間全体に広げています。

特に注目すべきは、nendoが特別にデザインした鮮やかな黄色の卵石型ライトです。このライトは全体の川をイメージしたデザインコンセプトに呼応するだけでなく、時間帯によって変化する光と影の演出を楽しめます。この3層からなる照明デザインにより、車内はまるで柔らかな水の波に包まれているかのような雰囲気が生まれ、光と影が織り交ざった唯一無二の移動体験が創り出されています。

この環境に優しい列車は、650~740名の乗客を乗せることができるだけでなく、美学にもこだわり、97%リサイクル可能な素材を使用してサステナビリティの理念を実現しています。まさにグリーントランスポートの新しいお手本と言えるでしょう。

出典 @tgvinoui @sncfvoyageurs @nendo_official @yann_audic @arep_group

This site is registered on wpml.org as a development site. Switch to a production site key to remove this banner.